グレッグ・イーガン「宇宙消失」
前回の「万物理論」に引きつづき読み返してしまった。
SF マガジン誌上の 1999 年ベストにも輝いたこの作品、グレッグ・イーガンの本邦デビュー作であるだけでなく、実はわたしの記念すべき SF 読者デビュー作でもある(いや、待てよ。嘘かもしれない。ジェイムズ・P・ホーガン「星を継ぐもの」が先だったか。なにしろ数年前の話なので...)。
最初に読んだときは、間髪入れず繰り出される専門用語と知識、そして繰り広げられる物語の意味も分からぬまま雪崩れ込んだ結末に、ただただ呆然としていたような気がする。簡潔にいえば唖然。
それは今回の再読でも同じだった。違うことといえば、物語にうまく乗れたことだろうか。取り残されるのではなく。あれから何冊も SF を読んだおかげでジャーゴン(専門用語)への耐性と SF 的展開への慣れが身についたのかもしれない。以前は圧倒されるだけだった結末も、実は美しく、感動的でさえあることに気づかされる。
もちろん、欠点がないわけではなくて、娯楽作品としては退屈だったり冗長な展開だったりする部分もあるわけだが、読み終わった直後の今は、そういう瑣末なことがどうでもよい。安心して傑作だと言える。
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グレッグ・イーガン「万物理論」
個人的には「順列都市」がグレッグ・イーガンの最高傑作なのだが、SF に馴染みの薄い友人に薦めるとしたら「万物理論」を選ぶ。
邦題にもなっている万物理論(原題は DISTRESS)だが、物語の主眼はそこにはない。これはジャーナリズムの話だ。もちろん、これは表層的、一面的な捉え方だろう。もしかすると、作品のテーマを取り違えているかもしれない。しかし、そうした捉え方も許容する懐の深さが、この長編をイーガンの他長編より際立たせている。
気宇壮大な SF と社会的テーマが見事に融合した傑作。
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堀晃「バビロニア・ウェーブ」
はじめて読む堀晃作品は第二十回星雲賞の日本長編部門を受賞した「バビロニア・ウェーブ」。
星雲賞受賞作を読むのは、日本長編部門のなかではこれが二作目(一作目は野尻抱介「太陽の簒奪者」)だったりする。星雲賞は海外作品やコミックだと、それなりに有名な作品は読んでいるのだが、国内作品は意外にすくない。
人類の主要なエネルギー供給源となっている巨大なレーザー光束——バビロニア・ウェーブ。この莫大なエネルギー源の謎が物語のテーマになっているのだが、個人的には、
- 有り余るエネルギーを手にした文明がどうなるか
- エネルギー事情が一変したことにより、破棄されたコロニー
- コロニーの、回転する重力場で育った主人公マキタの特性
といったものに興味をそそられたし、小説内でもわりかし多くの紙面を割かれているように思う。
ただ、最終的に、これらの要素が脇道としてしか感じられなかったのは残念だ。バビロニア・ウェーブの謎も単体では求心力に乏しく、このへんや一癖ある登場人物たちがうまく絡んでいけば傑作になった気もするんだが...。
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グレッグ・イーガン「ひとりっ子」
前 2 作の短編集よりもアイデンティティ——この自分とは何者なのか——に焦点を合わせた作品群であるように感じられた。また、登場人物たちの「決断」が作品世界にこれほどの影響を及ぼす小説というのも珍しいだろう。執筆時期が近しいせいもあってか、第一長編「宇宙消失」を彷彿とさせる。
イーガン流の大風呂敷が好き、という人にはやはり「ルミナス」がおすすめ。数学好きな人ならきっと楽しめる、かどうかは、私自身が数学好きではないのでわからない。でも、楽しめた。
ところで、作中に気になる誤植を見つけたので紹介したい。文庫の初版で 343 ページ目:
(前略)どの作家も飽きもせずに設定の前提を自明とするばかりで、背理法はもろちん、喜劇による実存主義的鎮痛剤といえるレベルにさえほど遠かった。
もろちん...。もろちん...。
hReview by Takanori Ishikawa , 2006/12/30

- ひとりっ子
- グレッグ イーガン Greg Egan 山岸 真
- 早川書房 2006-12


今読んでも古さを感じさせない
何というか……???

宇宙物理学の素養があれば、さらに楽しめます