アミール・D・アクゼル「相対論がもたらした時空の奇妙な幾何学―アインシュタインと膨張する宇宙」
相対性理論の本を何冊も読んでいる。とはいえアカデミックな専門書ではなく、どれも一般向けや科学雑誌の特集ばかり。そんな僕がもう一冊読んでみた。
「天才数学者たちが挑んだ最大の難問―フェルマーの最終定理が解けるまで」と同じ著者だと気づいたのは読みおわったあとのこと。資料をもとにドキュメンタリータッチで追うスタイルはたしかに似ている。
特殊相対性理論と一般相対性理論。特殊相対性理論から一般相対性理論に至る葛藤や重要性、そのへんがやっと腑に落ちた気がする。難をいえば、アインシュタインの人となりが見えてこないことか。むしろ周辺の人たちの方が活き活きと描かれている。「いままでにないアインシュタイン像」みたいなことが前書きにはあったので、そのへんは残念だった。
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歌野晶午「葉桜の季節に君を想うということ」
第 4 回(2004 年)本格ミステリ大賞も受賞した、すこしまえの話題作を文庫化を機に読んでみた。二日で読了。いいペース。
結末にはたしかに驚かされるのだが、そこまでの過程がけっこうツラい。盛り上がりがいまひとつ、会話も描写も拙い気がする。一度そう感じてしまうと、結末の意外性と「老人を騙す悪徳商法」の絡みも空回りしているように感じられ、これはもう損をしている。
佳作をコンスタントなペースで発表している著者なので、受賞に文句はないんだが「ROMMY - 越境者の夢」のような情熱と構築美のバランス感覚が懐かしくなる。歌野晶午って自分の中ではやっぱり、島田荘司の家に押しかけて酔いつぶれてるような、勢いあまったミステリ作家なんだよな。
まあ、好きな作家なので新作は買うし、機会があれば昔の作品も読み返そうと思った。
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キャロル・オコンネル「魔術師の夜」(上)
マロリー・シリーズ第五作。
引っ越し前から放ったらかしになっていた本書を読みはじめて、一気に引きこまれてしまった。
前作までのマロリーは、ただの「クールなヒロイン」だった。幼いころの体験から性格がねじ曲がってるとか、根っからのコソドロとか、これまでにも散々そういった描写はあったわけだけど、あくまでストーリーを彩る脚色、オマケに留まっていたように思う。
しかし、今作の彼女は違う。
自分を信じてくれない上司や周囲の友人たちに敵意を剥き出しにしながら孤軍奮闘。マラカイという天才的奇術師、一枚も二枚も上手をいく相手に翻弄され、ときおり顔を見せる感情に戸惑い、揺れている。いままで冷静沈着だったマロリーの感情が、大きくぶれているからこそ印象深かったのかも。
しかし、今回は相棒のライカーに感情移入してしまった。そりゃ、心配で見ていられないよ。
| 魔術師の夜 上 (創元推理文庫) | |
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グレッグ・イーガン「ひとりっ子」
前 2 作の短編集よりもアイデンティティ——この自分とは何者なのか——に焦点を合わせた作品群であるように感じられた。また、登場人物たちの「決断」が作品世界にこれほどの影響を及ぼす小説というのも珍しいだろう。執筆時期が近しいせいもあってか、第一長編「宇宙消失」を彷彿とさせる。
イーガン流の大風呂敷が好き、という人にはやはり「ルミナス」がおすすめ。数学好きな人ならきっと楽しめる、かどうかは、私自身が数学好きではないのでわからない。でも、楽しめた。
ところで、作中に気になる誤植を見つけたので紹介したい。文庫の初版で 343 ページ目:
(前略)どの作家も飽きもせずに設定の前提を自明とするばかりで、背理法はもろちん、喜劇による実存主義的鎮痛剤といえるレベルにさえほど遠かった。
もろちん...。もろちん...。
hReview by Takanori Ishikawa , 2006/12/30

- ひとりっ子
- グレッグ イーガン Greg Egan 山岸 真
- 早川書房 2006-12




とても読みやすいが、トリックに違和感。

翻弄される主人公