安田均「ゲームを斬る」
もともと、テーブルトーク RPG が好きでよく遊んでいた。中高生の頃だ。
最初に遊んだゲームこそダンジョンズ&ドラゴンズだったが、おりしも世間はグループ SNE 全盛の時代。ソードワールド、ロードス島戦記、クリスタニア...、と次々出されるテーブルトーク RPG を遊びまくった(ちなみに、これらのゲームは背景世界は同じだが、システムはどれも異なっていた)。
本書「ゲームを斬る (Role&Roll Books)」は、グループ SNE の中心的人物でもある安田均の評論・エッセイ集。これは読まないわけにはいかない。ゲーム攻略本にまじって書店の隅に置かれていたのを見つけ、思わず購入してしまった。
二部構成になっていて第一部がボードゲーム、第二部が RPG の話になっている。そして、第二部の前半はボードゲームを RPG の観点から紹介したら、という趣向。なので、純粋に RPG の内容といえば全体の四分の一程度。ボードゲームはそれほど熱心なプレイヤーではなかった。しかし、それでも楽しめる内容。
グレッグ・イーガン「宇宙消失」
前回の「万物理論」に引きつづき読み返してしまった。
SF マガジン誌上の 1999 年ベストにも輝いたこの作品、グレッグ・イーガンの本邦デビュー作であるだけでなく、実はわたしの記念すべき SF 読者デビュー作でもある(いや、待てよ。嘘かもしれない。ジェイムズ・P・ホーガン「星を継ぐもの」が先だったか。なにしろ数年前の話なので...)。
最初に読んだときは、間髪入れず繰り出される専門用語と知識、そして繰り広げられる物語の意味も分からぬまま雪崩れ込んだ結末に、ただただ呆然としていたような気がする。簡潔にいえば唖然。
それは今回の再読でも同じだった。違うことといえば、物語にうまく乗れたことだろうか。取り残されるのではなく。あれから何冊も SF を読んだおかげでジャーゴン(専門用語)への耐性と SF 的展開への慣れが身についたのかもしれない。以前は圧倒されるだけだった結末も、実は美しく、感動的でさえあることに気づかされる。
もちろん、欠点がないわけではなくて、娯楽作品としては退屈だったり冗長な展開だったりする部分もあるわけだが、読み終わった直後の今は、そういう瑣末なことがどうでもよい。安心して傑作だと言える。
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グレッグ・イーガン「万物理論」
個人的には「順列都市」がグレッグ・イーガンの最高傑作なのだが、SF に馴染みの薄い友人に薦めるとしたら「万物理論」を選ぶ。
邦題にもなっている万物理論(原題は DISTRESS)だが、物語の主眼はそこにはない。これはジャーナリズムの話だ。もちろん、これは表層的、一面的な捉え方だろう。もしかすると、作品のテーマを取り違えているかもしれない。しかし、そうした捉え方も許容する懐の深さが、この長編をイーガンの他長編より際立たせている。
気宇壮大な SF と社会的テーマが見事に融合した傑作。
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ローレンス・M・クラウス「物理学者はマルがお好き―牛を球とみなして始める物理学的発想法」
「牛を球とみなして始める物理学的発想法」という副題や表紙のイラストから想像していた一般向けの物理雑学本、という当初の予想はいい意味で裏切られた。物理のさまざまな理論が構築されるに至った歴史的背景とジョークをまじえながら、数学マインドにたいする「物理マインド」とでも呼ぶべき原則を説くハードコアな本。
語り口は軽めで、第一章の牛を球に近似する話までは何とかついていける。そして、第三章の創造的剽窃(p.141「既存の法則を捨てるのではなく、その枠組みのなかで創造的に生きる方法を見出した」)の原則などは共感できる部分も多い。
しかし、第四章くらいになると、あまり真面目な学生でもなかった身にとっては、詳細を追うことが難しくなってくる。なんだか、気さくな学者に招かれて、あれこれ(アカデミック特有のジョークをまじえた)世間話を聞いているうちに、とんでもないレベルの話題に巻き込まれてしまった感じ。
ひさしぶりに体力を消耗する読書だったが、買って損はなかった。あと、数式がまったくといっていいほど出てこないのはいいね。そもそも、文系の人には読み方さえ分からない表記の数式とかあるので。
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堀晃「バビロニア・ウェーブ」
はじめて読む堀晃作品は第二十回星雲賞の日本長編部門を受賞した「バビロニア・ウェーブ」。
星雲賞受賞作を読むのは、日本長編部門のなかではこれが二作目(一作目は野尻抱介「太陽の簒奪者」)だったりする。星雲賞は海外作品やコミックだと、それなりに有名な作品は読んでいるのだが、国内作品は意外にすくない。
人類の主要なエネルギー供給源となっている巨大なレーザー光束——バビロニア・ウェーブ。この莫大なエネルギー源の謎が物語のテーマになっているのだが、個人的には、
- 有り余るエネルギーを手にした文明がどうなるか
- エネルギー事情が一変したことにより、破棄されたコロニー
- コロニーの、回転する重力場で育った主人公マキタの特性
といったものに興味をそそられたし、小説内でもわりかし多くの紙面を割かれているように思う。
ただ、最終的に、これらの要素が脇道としてしか感じられなかったのは残念だ。バビロニア・ウェーブの謎も単体では求心力に乏しく、このへんや一癖ある登場人物たちがうまく絡んでいけば傑作になった気もするんだが...。
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